来日留学生の実情
日本語教師として日本語学校で勤めて約10年の筆者が来日留学生の実情について書いていきたいと思います。
国の狙い
2008年7月29日文部科学省によって策定された計画の一つが「留学生30万人計画」です。少子高齢化に伴い、日本は外国人留学生の受け入れ拡大を行い、国の労働力として彼らの力を日本で発揮してもらいたいという狙いがあります。近年コンビニで見かけることの多い外国の方々も留学生として来日してきた人が多いのではないかと思います。
留学生のアルバイト状況
筆者が約10年間の日本語学校勤務で教えたことのある学生の国籍は、スリランカ、ミャンマー、タイ、ベトナム、ネパール、ウズベキスタン、中国、韓国、バングラデシュ、台湾、香港で学校の特色や規模、受け入れる学生の国籍などによって同じ日本語学校といえどその雰囲気はさまざまです。
彼らの留学目的は、日本での起業や日本企業に就職した暁に国の家族に仕送りをすること、単純に国や親から離れたいことなどが大半です。そのため、「留学」というビザを取得しながら、アルバイトに没頭し勉学に励む学生が少ないなんてこともあります。
(日本語学校留学中には「資格外活動」として通常週28時間以内のアルバイ トを許されますが、長期休暇の場合は、学校とアルバイト先に申請を行い週40時間までのアルバイトが許されます。)
反対に、アルバイトは全くせず、有名大学に入学する事を目的として勉強に励む留学生もいます。しかしながら、そういった学生は塾に重きを置き、日本語学校には在籍しているだけというような状態も少なくありません。どちらにせよ、日本語学校の教職員は出席率とアルバイト管理、そして日本語の成績を向上させるよう厳しく学生指導することが求められます。
これらは、母国の文化的背景(時間的感覚や物事の捉え方、母国の言語と日本語の類似性があるかないかで出てくる学習面での優劣)や経費支弁状況も関係してきます。
現場としては、「目的に向かって一生懸命頑張っている留学生を応援したい」というのが根本にあり、遊学援助ではありません。
日本での就職率
日本語学校を卒業後の進路は大きく専門学校・大学・大学院・就職・帰国に分かれ、日本語学校卒業時にはCEFAR A2以上(日本語能力試験N4レベル)が最低限必要とされています。しかし、進学するにしろ就職するにしろ現実的には日本語能力試験N2以上、日本留学試験220点以上(一般大学レベル)があることが望ましいとされています。
昨年度までの進路先のパンフレットを見るとほとんどの学校が就職率95%以上を謳っていますが、2020年度から本格的に広まった新型コロナウィスの関係で、特に 旅行・観光業界の就職は日本人でも厳しくなったと言われています。関係者によると留学生にも人材確保の枠はある程度与えられているようですが、これまで多くの留学生が航空業界やホテル業界に就職してきたことを考えると狭き門になったと言えるでしょう。
また、2022年2月までの入国規制に伴い長い人で約2年入国を待たされた外国人留学生が約37万人もおり、国内外から日本政府に向けデモ活動を起こす様が見られました。国の労働力として留学生に期待をしている日本政府としては新型コロナウィウスで受けたダメージは大きく、留学生にとっても各関係機関にとっても大変もどかしい期間でした。この3月から入国できる留学生の人数も1日7000人に引き上げられ、入国緩和による希望の兆しも見えてきました。
進路先の広報(営業)対応をする中で「専門学校は就職が難しいため就職指導から大学進学指導へと方向転換の舵を切り、留学生が獲得できない学校は日本語学校と合併を図るなどの動きを見せている」と聞きます。これらの現状から留学生の希望進学率は例年より高くなり、就職率は低くなっている傾向にあると言うことができるでしょう。
ここ最近日本国内では「fire」という言葉が各メディアで取り上げられ、若いうちにがっつり稼ぎ、早期退職を試みる人が増えてきています。数年前に流行った「ノマド」という働き方もオンライン化が進み、今や当たり前になってきています。多様な働き方で個人の活躍する場所も企業に限ることではなくなってきました。少子高齢化の問題はありますが、来日留学生の労働力を借りながら私たち日本人の労働力を持って日本経済を良くしていきたいものだと日々考えています。
まとめ
来日留学生の実情
1.留学生30万人計画は新型コロナウィルスの影響で数年滞りを見せている
2.留学生のアルバイト状況と学習態度は経費支弁状況と目的意識による
3.近年留学生の日本での就職率は厳しくなっている
今回は、2020年度から状況が一変した来日留学生(とその関係機関事情)について書きました。日本で日本語学校に就職したい方、留学生と関係のある仕事に就きたい方の一助となれば嬉しいです。